3.11 被災花卉生産者のための義援金のお願い
義援金のお願い
平成23年8月31日 花葉会会長 安藤敏夫
花葉会は、東北地方太平洋沖地震によって被災した花卉生産者を支援するために、全国の花卉生産者から義援金を募り、またそれを花葉会が補填して「3.11.被災花卉生産者支援基金」とし、義援金の全額を、被災者を掌握している現地の花卉生産者組織にお届けします。
皆さまにおかれまして、同じ産業の仲間として、被災した花卉生産者を支援したいのに、義援金を届ける仕組みが無くて【どうしたらいいのか分からない】と、思われた方が少なくないのではないでしょうか。
被災した花卉生産者に渡して欲しいと、被災地の自治体に義援金を持って行ったら、「それは無理。被災地の復興に使わせて頂くが、それでもいいか」と言われて【会議費や旅費に消えるのだろうな】と思いつつ、義援金を渡して帰ってきた、という人もいます。
時間はかかりましたが、やっと被災地の全容が分かってきました。悲惨です。
被害の大きい岩手県・宮城県・福島県・茨城県・千葉県の花卉生産者を代表する既存組織あるいは新規組織に義援金の「受け皿」となって頂いて、下記のルールに従って、被害の甚大な花卉生産者に義援金を直接届けて頂くことをお願いしました。
義援金の受け皿を【東北地方太平洋沖地震で被災した花卉生産者の会】と名付けました。
岩手県 | 岩手県被災花き生産者を支援する会 | 会長=佐藤 明 |
宮城県 | 宮城県花と緑普及促進協議会 | 会長=百々喜明 |
福島県 | 福島県花卉生産者復興協議会 | 会長=高玉恵治(代表) |
茨城県 | (社)茨城県花き園芸協会 | 会長=久家源一 |
千葉県 | 千葉県海匝地区等被災花卉生産者を励ます会 | 会長=小澤和英 |
義援金を受領して頂くこと。
合議により、上記5県の花卉生産者組織へ義援金を配分して頂くこと。
生産施設など、花卉生産に必須な施設など(生産基盤)に対する被害の程度を目安として、義援金を傾斜配分して頂くこと。
原発事故によって実質的に生産基盤に被害を受けた場合も含むこと。(下記、配分のルール参照)
あらゆる既存組織と無関係に義援金を配分して頂くこと。
義援金の配分先・配分額・配分根拠に関する報告書を提出して頂くこと。
総額 1000万円 (募集期間:平成23年9月1日~11月30日)
平成23年12月に配分
全国の花卉生産者が、あらゆる組織とは無関係に、互いに支援できる仕組みが今後とも必要です。
是非、ご協力ください。
義援金の配分ルール
以下の文面を「東北地方太平洋沖地震で被災した花卉生産者の会」へお渡ししました。皆さまからの義援金は、このルールに従って被災した花卉生産者に届けられました。
生産施設など、花卉生産に必須な施設など(生産基盤)に対する被害の程度を目安として、義援金を傾斜配分する。
原発事故によって実質的に生産基盤に被害を受けた場合も含むこと。
- 「生産施設など、生産基盤の被害」に対する考え方
花卉生産者である以上、必ず生産施設をもっているはずです。生産者にとって生産施設は、人間にとっての心臓みたいなものです。生産施設に大きな被害を受けると収入が途絶え、復興に必要な様々な仕事にブレーキがかかります。そのため「3.11.被災花卉生産者のための義援金」は「生産施設など、生産基盤の被害」の程度を目安として傾斜配分するのが、被災された生産者にとって公平と考えます。
「生産施設など」と表現しましたが、生産施設に限定しない理由は、例えば津波や液状化によって圃場が生産に適さない状態になった場合も、「生産施設の被害」と同様に収入が途絶えてしまうからです。
このように「生産施設など、生産基盤の被害」を重視してはいますが、義援金は生産施設を復活させるためにお渡しするのではありません。
「生産施設など、生産基盤の被害」を「目安」として配分額を決めて頂くのですが、義援金の使途に制限は設けません。全国の花卉生産者から浄財を頂いても、被災者があまりに多いので、お渡しできる金額はわずかになってしまうでしょうから。
義援金が、せめて「全国に仲間がいるんだよ。応援しているよ。負けるんじゃないよ。」という思いを乗せて、復興をためらったり、諦めそうになったり、疲れているであろう被災地の花卉生産者の背中を後押しする力になってくれることを願っています。 - 「原発による被害」に対する考え方
福島県の避難指示圏にいる花卉生産者は、避難しなければならないことから、生産施設の被害に係らず生産ができません。このことも「生産施設など、生産基盤の被害」と判断して、支援の対象として下さい。
いずれ東電や政府からの保障があるでしょうけど、いつになるか分からず、当面の収入が途絶えて復興の妨げになっている点を考慮したいと思います。避難先で生産を再開された方も配分の対象として下さい。 - 「ご家族の被災」に対する考え方
ご家族が亡くなられたり、行方不明の方もおられると思います。冷たいようですが、「ご家族の被災」についてもガイドラインを述べさせていただきます。
標準的な「家族」の考え方は、2親等までの範囲でしょうから、花卉生産の中心人物の1親等(親と子)と2親等(祖父母・孫・兄弟姉妹)が亡くなられたり、行方不明であったり、重傷を負われた場合にも配分を考慮してください。「中心人物」は実質的な中心人物であればよく、世帯主でなくてもいいと思います。 - 「花卉生産をあきらめた方々」に対する考え方
「生産施設など、生産基盤の被害」が原因で、花卉生産をあきらめてしまう方がおられる事を知っています。非常に残念です。「生産施設など、生産基盤の被害」に対する考え方で述べましたが、義援金は生産施設を復活させるためにお渡しするのではありません。そのため、花卉生産をあきらめる程の「生産施設など、生産基盤の被害」を受けた方々の心中を察して配分をお願いします。 - 「家屋等、生活関連施設の被災」に対する考え方
震災の範囲が極めて広く深刻なことから、義援金で何から何まで支援することは困難です。生産施設などに被害のあった生産者なら、家屋などにも被害があったことが予測できますが、「家屋等、生活関連施設の被災」を考慮すると、生産者にとっての心臓部である「生産施設など、生産基盤の被害」を考慮した配分が難しくなるので、残念ですが「家屋等、生活関連施設の被災」は考慮しないで下さい。 - 「停電による被害」に対する考え方
地震後の停電によって、天窓やカーテンが閉められなくなったり、暖房できなくなったりして、植物が被害を受けた生産者は非常に多く、東北と関東の全域に広がっています。そのため、「家屋等、生活関連施設の被災」と同様、「停電による被害」を考慮すると、生産者にとっての心臓部である「生産施設など、生産基盤の被害」を考慮した配分が難しくなります。
一方では、発電機を準備していたり、手動で天窓やカーテンを閉められる仕組みにしていたりして、被害を回避した生産者もいます。もし「停電による被害」を考慮することとなると、「保険」に加入していない人だけを救済するのと同じで、むしろ不公平になる面もあります。そのため残念ですが「停電による被害」は考慮しないで下さい。 - 「風評による被害」に対する考え方
風評被害は悩ましい問題です。最大の問題は「計り知れない」点でしょう。風評被害の時間的・空間的な範囲とその程度、どれも計り知れません。そうした意味で、残念ですが「風評による被害」も考慮しないで下さい。
私としては花産業という「自由な国の自由な産業」に係る皆さまは、勇気をもって、知恵を出して、いかなる「風評被害」をも払拭して頂けるものと信じております。 - その他
当然のことではありますが、県ごとに被災状況が異なりますので、上記のルールやガイドラインと大きく矛盾しない範囲で、県ごとに独自の配分ルールを決めて頂いて結構です。但し、その際には、配分ルールの提示を求められる可能性が想定されますので、配分ルールを成文化しておくことをお勧めします。
なお、このルールは安藤が提唱し、[東北地方太平洋沖地震で被災した花卉生産者の会]の構成員とやり取りして、合意を得たものです。
以上。
被災地の状況(平成23年8月31日時点)と、義援金の「受け皿」
岩手県
岩手県では、沿岸部の花卉生産者は点在しており総数は多くありませんが、津波により施設や圃場を根こそぎ流されるなど壊滅的な被害を受け、生産基盤を失いました。特に宮古・大船渡地域の被害が深刻で、ハウスをはじめ、トラクター、土詰め機等の農機も全て流されました。内陸部では露地圃場やハウスに地割れが発生するなど地震の影響がありました。現在、沿岸部では復旧対策が行われ始めていますが、食料関係が優先されており、ほとんどの花卉生産者はまだ再開のめどすら立っていません。しかし、被災しても花卉生産を続けようとする意欲は強く、今後の復興支援対策が期待されるところです。
「岩手県花の国づくり推進協議会」が平成20年度に解散したために、岩手県には花卉生産者の全県組織がありませんので、やむなく義援金の「受け皿」としての新たな組織=【岩手県被災花き生産者を支援する会】を作って頂き、岩手県一関地方振興局農林部長であった千葉大学園芸学部のOB=佐藤明氏に会長をお引き受け頂きました。現在、生産者の被災状況の詳細化が進められています。
宮城県では、沿岸部全域の花卉生産圃場に津波被害が甚大です。産地としては、南三陸町のキクや、名取市のカーネーションの被害がひどく、施設が根こそぎ持って行かれた所もあります。施設が使える状態で残った場合でも、除塩が必要で、少なくとも年内は植え付けができません。仙台市など他の地域では、生産者は点在しており、生産者ごとに生産基盤の被害程度は様々です。地盤の液状化による被害はないようですが、なにしろ震度7が記録されていますから、地震そのものによる生産基盤の被害も少なくありません。
宮城県の全県組織である【宮城県花と緑普及促進協議会】に義援金の「受け皿」をき受けて頂きました。会長は百々(とど)喜明氏です。同協議会には生産者以外の会員もおられますが、生産者に絞った義援金であることを理解して頂き、協力して頂きました。もちろん協議会会員以外も支援の対象として頂くよう、お願いしてあります。こうした事務局の理解を特記して感謝したいと思います。被害が広域に及ぶので大変な作業なのですが、生産者の被害状況は着々と把握されつつあります。
福島県では、震災と原発事故が重なって、花卉生産者の被害は深刻、かつ非常に複雑な状況になっています。沿海部に切花生産は少ないため、被災者のほとんどは鉢物生産者です。相馬市・南相馬市を中心とした沿海部では、津波によって花卉生産者の生産基盤が破壊された他、震度6強を記録した地域だけに、地震そのものによる被害も広域に認められます。原発事故によって立ち入りが規制されている警戒区域等にある大熊町、双葉町、富岡町、浪江町、広野町、楢葉町、南相馬市、飯館村とその周辺の地域では、生産基盤の被害に係らず、避難を強いられて実質的に生産基盤を喪失した生産者が続出しています。花卉生産をあきらめた方もおられ、また他県に移住されたり、花卉農家の従業員として働いている方もおられます。
福島県には花卉生産者の全県組織(福島県花と緑の国つくり協議会)がありますが、その代表が全農の役員であることから農協組合員以外を支援することは難しく、また同組織が生産者以外も含むことから生産者だけの支援は難しい、ということで、やむなく義援金の「受け皿」として新たな組織=【福島県花卉生産者復興協議会】を作って頂き、福島県鉢花生産者協議会の副会長=高玉恵治氏に会長をお引き受け頂きました。被災はしたものの元気な花卉生産者の努力で、鉢物生産者の被災状況は詳細に掌握されており、現在、切花生産者の被災状況の詳細化が進められています。
茨城県では、北部の海岸沿いの花卉生産者に津波の被害がある他、南部の神栖市などの沿海部と、稲敷市などの利根川沿いの地域で、かつて砂利採取を行っていた地区を中心として、地盤の液状化による生産基盤の損壊が発生しています。被害は、ハウス自体の損壊や、鉢花のベンチ、燃料タンクの損傷などで、被害が大きい鉢花生産者では、規模を縮小したり、年内出荷を諦めざるをえない状況となっています。
茨城県の花卉生産者の全県組織である【(社)茨城県花き園芸協会】に義援金の「受け皿」を引き受けて頂きました。会長は久家源一氏です。もちろん協会員以外も支援の対象として頂くよう、お願いしてあります。こうした事務局の格別の計らいを特記して感謝したいと思います。現在、被災状況の詳細な掌握が鋭意、進められています。
千葉県では、北東部の沿海部に位置する旭市とその周囲の花卉生産者に生産基盤の被害が集中しています。花卉生産者には津波の被害がなく、大きな被害はどれも地盤の液状化によるものです。かつて砂鉄を採掘した土地の被害が顕著です。温室の真ん中に1mもの段差が生じ、軒が波打ってしまいました。「家引き屋」がジャッキで温室を持ち上げ水平にするなど、復興が進んでいますが、失意からか、そのままになっている生産者も見受けられます。
千葉県には花卉生産者の全県組織(千葉県花き園芸組合連合会)がありますが、その代表が大きな被害の集中した地域から遠隔であること、被災した地域の組織率が低い、ということから、やむなく義援金の「受け皿」として新たな組織=【千葉県海匝地区等被災花卉生産者を励ます会】を作って頂き、千葉県北東部の花卉生産者の組織で、 日本フラワービジネス大賞2010(チャレンジ部門)を受賞した「ちば花と緑の会」の会長=小澤和英氏に会長をお願いしました。既に、行政により花卉生産者の被災状況は詳細に掌握されています。
以上。
監査
「3.11.被災花卉生産者のための義援金」に関する監査役を以下の方々にお願いいたしました。義援金を「東北地方太平洋沖地震で被災した花卉生産者の会」にお渡しする際に、監査報告をさせて頂きました。
- 田中桃三 公認会計士
- 登坂初夫 (株)登坂園芸・社長